原因不明の歯の痛み!何が起こっているの?
歯が痛くて歯医者に行ったのに歯には何も問題がない、ということが起こる場合があります。確かに歯に痛みを感じているのに歯に原因がない、とはどういうことなのでしょうか?
実は歯の痛みの原因が、歯ではないというケースは決して珍しくありません。
今回は原因不明の歯の痛みがある場合にどんなことが考えられるのか、ということについてご紹介します。
歯が原因ではない歯の痛み「非歯原性歯痛」

患者さんが歯医者に来院された場合、歯の痛みの原因を特定するために歯科医師が視診、打診、レントゲンによる検査などを行います。
これにより何らかの異常が見つかった場合、必要な歯の治療を行うことで歯の痛みは解決に向かっていきますが、どんなに調べても痛みの原因が分からないことがあります。
このような、歯に原因が見られないのに歯が痛い、というものを「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」と呼びます。
歯が痛いと、患者さんは辛いので歯の治療を希望されますが、歯が原因でない場合には歯を削ったりしても症状が改善することはなく、逆に悪化してしまいかねません。
非歯原性歯痛で考えられる原因
歯が原因でないのに歯が痛いと感じる場合、次のようなことが原因になっている可能性があります。
◆副鼻腔炎(上顎洞炎)
人間には副鼻腔が4つありますが、そのうちの上顎洞は上の歯のすぐ上方にあり、上の歯の歯根と密接していることが多くあります。
そのため、風邪などにより鼻炎を起こすと、上顎洞に炎症が広がって「上顎洞炎」となり、あたかも上の奥歯が痛いように感じられることがあります。
上顎洞炎で歯が痛むように感じる場合、特定の歯に痛みを感じるというよりは、数本の奥歯に鈍痛がある、噛むと痛む、というように感じることが多いです。
◆咬む筋肉の痛み
咬む筋肉が緊張して凝り、その結果感じる痛みを歯の痛みと感じてしまうこともあります。その場合、奥歯の重苦しい痛みとして感じることが多いです。
◆神経痛
顔面領域にある三叉神経に痛みを感じる「三叉神経痛」、顔面の帯状疱疹後の後遺症で長期間歯に激痛を感じることもあります。
◆頭痛
頭痛が元で歯に痛みを感じることもあります。よくあるような片頭痛でも、痛みが強いと歯が痛いように感じることもありますが、とくに痛みの強い群発頭痛の場合には、激しい発作的な痛みが歯の激痛として感じられることもあります。
◆狭心症や心筋梗塞
顔面から遠い場所にある病気が歯の痛みを引き起こすこともあります。
たとえば、狭心症や心筋梗塞がある場合、左側の歯を痛いと感じることがあります。このような場合、とくに運動時に心臓に負担がかかることで発作的に痛みが起きやすくなります。
◆精神疾患
うつ病や統合失調症といった精神的な疾患が元で歯痛が現れることもあると言われています。
◆原因の分からない痛み
上のどのケースにも当てはまらず、全く原因が不明な痛みもあります。
このようなケースは「非定型歯痛」と呼ばれ、抜歯後、神経を抜いた後に起こることも多く、神経が過敏になる、過去の歯科治療の神経損傷によるもの、心理的なもの、ストレス、といったことが原因として考えられています。
非歯原性歯痛の治療
もし、歯の痛みの原因が分からない場合、「とにかく歯を削ってほしい」「抜いてほしい」と希望する患者さんも多いですが、原因が分からないのにそのような処置をしても、当然ながら改善はせず、逆に新たな痛みを生み出すことにもなりかねません。
そのため、こういった痛みがある場合には、必要に応じて痛み止めを使用しながら根気よく原因を追究し、内科、耳鼻科などの医療機関、場合によっては大学病院などの大きな医療機関の痛みの治療を専門とする科で治療を受けるということも考慮する必要があります。