駒込駅前デンタルクリニックのドクターである松永先生と河合先生のインプラント治療に関しての思いや取組みを、インタビュー形式でご紹介しています。
【松永先生】まず河合先生が元々うちに勤めていただいていた経緯がございまして・・かれこれ12〜13年ほど前にうちが開業して初めての勤務医さんとしてきてくれたのが始まりです。
【河合先生】そうなんです。あの頃は生意気ばっかりで・・当時は、頭でっかちで・・色々ご迷惑をおかけして。本気で喧嘩することもありましたよね。
【松永先生・河合先生】笑
【河合先生】共通の知り合いの先生の紹介で行った勉強会でご一緒したのが、初めての出会いでしたね。ラスベガスのデンタルインプラントインスティテュート・ラスベガスという大きな歯医者を経営しているリオン・チェン先生(ハーバード大卒)とジェニファーチャー先生(ノースウェスタン大卒)のご夫婦が開催した勉強会でした。
【松永先生】そもそも河合先生は、河合先生のお母さんがハーバード大学にいらっしゃったことがきっかけでご夫婦とはお知り合いなんですよね。
【河合先生】そうです。うちの母が35くらいの頃に卒後の研修でハーバードにいて、そこでリオンと知り合って。母がリオンに卒後インプラントをするように勧めたら、アメリカでブレイクしちゃって。年間MAX4,000本打ったこともあるそうですよ。
【松永先生】それで、河合先生のお母さまの繋がりで、ご夫婦に日本人向けの勉強会を開催してもらって、その勉強会で共通の知り合いの先生に紹介してもらったと、そういう流れなんです。その後うちの医院を手伝ってもらっていました。
【河合先生】そうですね、その後2009年に渡米しまして、リオンのところでインプラントを1年勉強した後に、上海で6年半分院長をしながら診療し、2016年に帰国しました。
【松永先生】リオンが世界展開している歯科医院の上海の分院長をしていたんですよね。
【河合先生】そうです。
【松永先生】確か、河合先生は、日本人の先生でたくさんインプラントを打っている人と比べて10倍くらい多く打ってますよね。
【河合先生】そうですね。僕が開業してなくてフリーランスで2017年に打ったのが、250本くらいです。東京のトップクラスの先生で年間1000本くらいですし、大抵の先生は20〜50本くらいですから、結構打ってるほうですよね。ぜひ、医療法人藤弘会でも年間500本くらいはインプラントしたいですね(笑)
【河合先生】インプラント臨床研究会で主催者側として活動しており、年1回くらいは発表もしています。台湾の学会とも意見交流会をしたり、自分の所属している研究会と姉妹協定を結んだり、積極的に活動しています。台湾もインプラントを意欲的に学んでいる先生が多くて、リスナーもだいぶ増えていますね。日本はもうだいぶ落ち着いた感がありますが。
【松永先生】日本は、インプラントの材料と術式に関してはだいたい頭打ちで、今熱いトピックスとしては、CAD/CAMや口腔内スキャンとか、そういう補綴関係ですね。昔は技工士さんが手作りで作っていたので、腕次第というところが大きかったですが、機械の精度が上がり、かなり信頼できるものを均一に作れるようになってきましたね。
【松永先生】日本はあくまでも保守的でしっかりした物だけ提供するという感じですから、新しい物に関しては海外から取り入れる必要があります。だから、今後の臨床の流れがどう変わってくるかというのを把握するためには海外で勉強するのが必須になってきます。僕の場合だとICOI(国際インプラント学会)とかニューヨーク大学に直接行って勉強しています。あとは、グアテマラの大学でインプラントオペリーダーとしても活動しています。そんな感じで世界のインプラントの情勢を入手しながら、日本でいずれどんなインプラントが流行っていくか、患者さんに提供しやすいものになっていくか、という流れを掴みやすいようにしています。
【河合先生】海外はいいですよね。今はどうしてもコロナの影響で行けなくて残念ですけど。ぜひまた落ち着いたら海外で勉強したいですよね。僕も本当は今ベトナムのインプラントライセンスを申請中で、あと一歩というところで頓挫してしまいました。今年の末にはベトナムでインプラントを打ってるはずだったんですよ。プラトン社がバックについて、ベトナムの方の教育にあたる予定だったんです。
【松永先生】今うちで力を入れているのは、咬合とか夜の歯ぎしりへの対応です。歯ぎしりというのは、音がするもの、しないものがありますが、多少なりとも皆さんやっているものなんです。昔はマウスピースで対処してましたけど、マウスピースがあることで逆に力がかかっちゃったりすることがあるんですよね。ですので、今うちの医院では、ボツリヌス菌を入れて咬合力自体を減らすということをやっています。もちろん普段の生活には影響の出ない範囲で行います。噛むというのは、上下の歯でものを噛み砕くということですから、それができるなら過剰な力がかからない方がやっぱり歯が長持ちしますからね。そういうコントロールにも最近は力を入れています。インプラント手術自体は昔に比べて安全になっていますので、何かが起こるということはあまりないですね。
【河合先生】そうですね、そこまで咬合力が強い人は仮歯の時点で壊れてきますし、何をやっても全部壊してくるほど、とんでもない食いしばり、歯ぎしりをしている方っていらっしゃいますからね。自分の歯自体壊しちゃう人もいますから。
【松永先生】歯が真っ二つに割れてくる人もいらっしゃいますよね。
【河合先生】そういう方だとマウスピースだけだとなかなか難しいですよね。
【松永先生】最近の歯科界ではあまり歯を削らない方向に進んでいるので、あまり歯を削らずに済む接着性ブリッジというのも出てはいるんですけど・・でも歯って多少削っちゃうともうダメですよね。そこから感染が始まるのはもう間違いないし。接着力の観点から言っても、広く削って広く接着させたほうがよくくっつくわけじゃないですか。安易に小さな面積でくっつけても、単に外れ易くて、そこから汚れが入って悪くなりやすいので、僕はあまり積極的に取り入れる気にはならないですね。患者さんからご要望があればやることもありますけど。
【河合先生】そうですよね。
【松永先生】歴史的に見ても、接着性ブリッジというのはものすごく新しいものなので、トライするとエラーが出やすいですし、10年後にこの治療法は残っていないのではないか、とも思います。
【河合先生】何を選ぶか、という選択肢が増えているのはいいんですけどね。
【松永先生】残っていく治療法というのには、やはりそれなりの理由がありますからね。
【河合先生】人間の咬合力というのは、なめてかかれないですから、接着性ブリッジがそれに耐えていけるのか、という点からいうと、疑問ですね。
【松永先生】今の段階だと、顎の中に歯のような塊ができる、というところまでは行ってるようですね。
【河合先生】最近出たのは、歯髄バンクですか。親知らずから歯髄(神経)をとっといて、失活したところ(神経を抜いたところ)にそれを入れると、また歯髄が再生するというような夢のような話がありますね。でも実用はまだまだ先なのかな、という感じですね。
【松永先生】再生するためには、そこが生着するための細胞の場とか、それを活性化させる血液の流れが必要ですからね。そもそも歯の神経がしみやすいのは、血液の流れがもともと乏しいからですので、それを解決しないのにそこにそれっぽいものを入れたからと言って、果たしてうまくいくのかな、疑問に思います。
【河合先生】どこまで本当に培養するのかな、という感じですよね。
【松永先生】あと何十年かかるのか、僕たちが生きているうちに歯の再生、歯髄の再生というのは実現するのかな、と思いますね。少なくとも削ったところが再生する、というのは僕の個人的意見としてはないと思います。そこにはもう細胞も血液の流れもないですから。でもまあ実際に、歯髄を再生、歯を再生させるとなると、おそらく数百万円単位、もしくはそれ以上の費用になると思います。そう考えると、しばらくはインプラントが欠損補綴の中で天下を取りつづるかな、と思います。
【河合先生】昔は総入れ歯、部分入れ歯が多かったですけど、現在ではどちらも入れる人が減ってきていますよね。結局、1、2本の欠損ならインプラントの方が確実に長持ちしますし、何より楽ですよね。歯の再生に関しては、まだまだ先の話かなという印象ですね。